CAPSワークショップ 3/14 オブジェクトトラッキングによるビデオデータ解析方法・報告

日時:2017年3月14日(火)15:00-17:30

場所:関西学院大学上ヶ原キャンパス F号館地下ホール

企画者:高橋良幸(関西学院大学 応用心理科学研究センター 博士研究員)

話題提供者:竹内理人(東京工業大学大学院 総合理工学研究科 知能システム科学専攻)

 

企画概要:

動画データは記録できる情報が大きくなる分、その解析には手間や費用など大きなコストがかかります。しかしながら、ビデオに実験の様子を撮影し、動物やヒトの位置情報を時系列データとして出力することができると、その対象がどのくらいの時間どこに滞在していたのか、移動の速度など多様な解析をすることができます。本企画では動画データにおけるオブジェクトトラッキング法の紹介・習得を目的として企画いたしました。ビデオトラッキングソフトウェア『UMATracker』の開発者である竹内理人さんに話題をご提供いただきます。UMATrackerはインターネット上より無償でダウンロードができ、わかりやすいインターフェイスで操作することが可能なソフトウェアです。本ソフトウェアを用いると、トラッキングの精度向上に不可欠な動画前処理からオブジェクトトラッキングまでを容易に行うことができます。また、オブジェクトトラッキングにおいて頻繁に発生するミストラッキングの修正や、トラッキング結果の簡易解析も可能となっています。

最初の1時間程度は実際にどのようなことができるのかについて、具体的な例を紹介していただき、残りの時間は実際に皆さまにデータを解析していただく予定です。もちろん、ご自身のデータを解析していただいても結構ですし、必要であればデモデータをこちらで用意いたします。また、最初の講義だけの参加でも歓迎いたします。

 

報告:
UMATrackerという動画解析ソフトウェアの開発者の一人である、竹内先生に使用方法を含めお話しいただいた。
これまで、動画解析には高価格なソフトウェアや機材が必要であり、それら機材を用意してもハードウェア上、ソフトウェア上の制約が多く、汎用性が確保されていないという問題点があった。UMATrackerはインターネット上から無償でダウンロードでき、様々な形式のファイルを解析することが可能な、汎用性に富んだソフトウェアである。
動画解析は大きく分けて3つの段階から構成され、UMATrackerはそれぞれの段階に特化したソフトウェアによって構成されている。まず、画像の中から対象だけを抜き出すようなフィルタを作成する。動画解析においてはこの段階が特に重要であるが、UMATrackerには豊富な演算子が用意されており、それぞれを簡単に組み合わせることができる。それぞれの演算子はブロックパーツのような形で用意されており、それぞれを組み合わせていくことで最終的に対象部位だけを抽出することができるように、直感的な操作が行えるように工夫されている。フィルタの作成方法として、背景とのコントラストから対象を抜き出す方法、特異な色を抜き出す方法、背景画像を用意して動いている物体だけを抽出する方法が用意されている。それぞれの方法を組み合わせて対象を抽出することも可能であり、多様なフィルタを作成することができる。作成したフィルタによって動画から対象を抜き出すことができるようであれば、次の段階へと進む。次の段階では動画ファイルを処理にかけトラッキング対象のXY座標を出力する。このとき、トラッキングすべき対象がいくつあるのかをあらかじめ入力することで、複数対象をトラッキングすることが可能である。複数個体を判別するためのアルゴリズムもいくつか用意されており、対象同士が交差するような動きをしても精度よく追跡することができる。ただし、どれだけ最新の方法によって個体を判別しても、正しく個体を追跡しない場合や、判別対象が入れ替わってしまうなどのエラーは生じてしまう。したがって、これらのエラーを修正することが動画解析の最終処理である。UMATrackerに用意された最終処理方法は、基本的にマウス操作だけで処理は完結するため非常に簡便である。以上の工程を経て画面上のどこにトラッキング対象がいたのかを座標値として出力がなされる。出力されたデータをもとに、トラッキングした対象が画面上のどこにどれだけ滞在していたのかを出力するソフトウェアも付属しており、データの傾向を簡単に視覚化できる機能も用意されていた。
ワークショップということで、参加者が実際にソフトウェアを使用しながら質疑に応答していただくという形で講演していただいたが、講演を通じて活発な議論がなされていた。また、どのようなことに気を付けて動画データを記録するべきかなどの具体的なノウハウについても議論され、非常に有意義なワークショップであった。今後、トラッキング技術を用いた多角的なデータ解析の積極的な利用が期待される。
文責:高橋良幸

参加者:11名