第27回CAPS研究会 6/14 守谷順先生(関西大学)・報告


講演者: 守谷順先生(関西大学社会学部・准教授)
日 時: 2018年6月14日(木) 16:50~18:20
場 所: 関西学院大学上ケ原キャンパス F号館305号教室

タイトル:心的イメージの効果と可視化―顔印象,注意,不安との関連

要旨:
私たちの多くは,外からの刺激がなくとも頭の中であるイメージを作り上げることができます。例えば,みずみずしいオレンジを輪切りにしたところを想像してください。実際に見たときのリアリティはなくとも,色や形をイメージすることができるかと思います。では,視覚的なイメージについて,①可視化することは可能でしょうか?②イメージは他の認知機能にどのような影響を与えているでしょうか?③視覚的イメージの個人差はあるのでしょうか?
本研究会では,以上3点について簡単にお話しする予定です。①では,Dotsch & Todorov (2012)が発表した逆相関法を用いた顔イメージの可視化を利用し,ある集団に対する顔イメージの可視化実験の結果について報告します。②では,視覚的イメージが注意に与える影響について,視覚探索実験の結果を報告します。③では,個人差の1つとして不安に焦点をあてて,イメージ能力・内容との関連について報告できればと考えています。以上の研究を統合して,今後のイメージ個人差研究について議論できればと思います。

報告:

本研究では心的イメージについて,イメージが注意に与える影響,イメージの可視化という点を検討した。イメージは精神疾患との関連が報告されており,例えば,心的外傷後ストレス障害(PTSD)ではトラウマ記憶が鮮明なイメージとして侵入するという症状が見られる。社交不安では注意資源が多いといった注意の面での特徴があり,加えて,想像上の他者というイメージが不安症状に関わるとされる。まず,イメージが注意にどのような影響を与えるかを検討した。これまでの研究から,ワーキングメモリに保持されている情報は,注意を誘導することが明らかになっていることを踏まえ,本研究ではイメージすること(例えば,赤色をイメージする)が,イメージした情報(例えば,赤い三角)への注意を促進するかどうかを調べた。視覚探索の実験を行った結果,イメージした情報はその後の視覚探索を促進することが示され,イメージが注意を誘導することが明らかになった。一方で,顔のイメージを用いた場合に関してはより詳細な検討が必要とされる。また,前述したように社交不安においては他者のイメージが重要となるだけでなく,(注意資源が多いために)脅威的な情報へ注意が向くという特徴がある。それでは,社交不安においては他者に対してどのような顔イメージが形成されているのだろうか。社交不安との関連を検討する前に,他者に対する顔イメージを可視化できるかどうかを検討した。顔イメージの可視化には逆相関法を用いた。イスラム教信者の顔イメージの可視化とそのイメージの年代による変化を調べた。IS(イスラム国)のニュースが頻繁に報道された年から,徐々に暖かみのある顔イメージに変化していることが示された。また,精神疾患傾向との顔イメージの関連についても自己顔のイメージに着目した検討などを現在行っており,今後の研究を行っていきたい。

イメージと社交不安の関連から端を発した様々な研究成果をご発表いただいた。フロアとの議論も活発で盛会にて終了した。

(文責:小林)

参加者:21名